劇団新和座公式サイトをご覧の皆様へ。

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2016-05-08_ito劇団新和座公式サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
2018年4月より座長を務めております、いとうともえと申します。どうぞ末永くお見知りおきをお願い申し上げます。

まず最初に、個人的な話をさせてください。
私が当劇団に入団したのは、2017年の夏頃です。つまり“外からの者”なのです。例えるならそう、日本代表サッカーチームの監督はこんな気持ちなのかもしれない、と思います。少し、違いますか。

さて、劇団新和座が目指しているもののひとつに<真情の吐露>があります。人が抱いている真の感情の力。それをお客様にお届けしたい……私はこの思いに強く共感しました。
人は、伝えたいことがある時、“言葉”を生み出します。歌にも、絵画にも、彫刻にも、建築物にも、そしてもちろん演劇にも、言葉がこめられています。誰かに伝えたい思い。伝えたかった思い。それらは悲鳴のように明確なこともありますし、注意していないと見逃してしまうような繊細なものであることも。会話をしていてふと変化する表情とか、挨拶を交わした時の空気感とか、道端に捨てられた煙草の吸い殻とか、皆さまが日々感じていらっしゃるすべてのことが、誰かが発している言葉なのです。
一筋縄ではいかないのが人間の面倒くさいもとい面白いところでして、本当の思いを何重もの嘘で隠してしまうことが多々あります。それを「察してください」なんて言われた日にはもう、察するにあたり十分な体力を回復させるため抱えている仕事を片付けた後しっかりと食事をして入浴し8時間の快適な睡眠をとってからでもいいだろうか?と嘆願せざるを得ません。言葉の裏に隠された本当の思いを“察する”こと。それをするには相応の体力がいるのです。
舞台とはすなわち嘘の塊です。虚構です。すべてを察していかなければなりません。受け取る側にも健全な体力が求められるのですから、舞台を見て楽しんでくださっている方々は本当に素晴らしいと思います。
どんなに面倒でも、苦しくても、生きて、誰かと出会う度に心が動き、たくさんの感情を体験する。その素晴らしさをご存知の方だけが、お芝居の世界にどっぷりとはまってしまうのでしょう。

「あなたはなぜ舞台活動をしているのですか?」
そう問われた時、私はこう答えます。
「多くの人に笑顔を届けたいからです」
これは、私の個人的な思いですが。舞台をはじめとする虚構の世界には、人を笑顔にする力があります。現実の世界は往々にしてつらいことの方に目がいって、悩みや憂いが尽きません。だからこそ、そうではない世界に理想や尊さを求めます。
良い作品というのは、何かしら前向きなエネルギーを与え、心の中に残り続けるものです。鑑賞した後の体は何とも言えない充実感に満ちているものです。
私は、こういった作品との出会いがもたらすプラスのエネルギーを、“笑顔”というキーワードに置き換えて、求めてきました。
しかしこのところ、この<笑顔を届けたい>という目的に疑問を持ってしまったのです。笑顔を届けたいという思いは、決して嘘ではありません。ただ、足りない、と感じるのです。笑顔という言葉に覆われた本当の思いこそ、皆さまに“察して”いただきたいものなのではないかと思えてならないのです。
その本当の思いとは、どこにあるのか。私は俳優・演出・脚本として好き放題やらせていただいておりますが、脚本においては皆さまのお目にかかることがまだ少なく。ひっそりと書き続けてはいるのですが……ここに、ありました。近い。
物語を作ろう!と思い立つ時の私の心は、笑顔からはほど遠く、この世界の理不尽さ、二律背反の鎖に囚われた人間の虚しさに暗く沈んでいることがほとんどで、結果、人を楽しませるような明るい話の少ないこと少ないこと。
「この世界って、人間って、どうしてこうなの」
という怒りにも似た解決できない疑問を抱いた時、私は誰かにこの思いを伝えたくて、眉間にしわを寄せながら物語を書くのです。おのれの感情が整理できず、泣き喚くしか方法を知らない幼子のように。
それでいて、小児向けの希望あふれる物語などを見ると、それらが発する言葉の美しさに涙を禁じ得ず、それらを作り上げた大人たちの心意気に感謝し、いつか自分もこのような作品を書いてみたいと思うのです。
このことからも分かるように、私はただ笑顔を届けたくてこの世界にいるのではありませんでした。美しい世界だと思えるのは、汚い部分を知っているから。愛が温かいと感じるのは、冷たい孤独を知っているから。そんな世界が、私は大嫌いで、大好きなのです。

こんな私が座長としてできることは何か。それは<真情の吐露>を引き継いでいくことと<新しい風になること>だと考えています。
新しくするよ〜と言って、新和座の過去すべてを打ち壊しよもや否定しようなどとは思っていません。それができるのは鉄槌を持った神さまだけです。
風は、花を揺らします。太陽の光を届け、雨を降らし、夜の静寂を連れてきます。命がいきいきと輝くための、ささやかなお手伝いがしたいのです。
輝きを知るためには、苦しいけれど闇を知らねばなりません。苦しみだけの世界には輝きは生まれません。陰と陽のいずれもがあるからこそ人は人なのだと、伝え続けていく所存です。何より座の旗を預かる私自身が、この陰陽の波に一喜一憂せぬ人間にならねばと、気を引き締めております。

かねてより新和座を応援してくださっている皆さま。舞台って何してるの?という皆さま。普段から数々の舞台作品をご覧になっている皆さま。機会がございましたら、劇場にてお目にかかれますと幸いです。
明るい言葉、暗い言葉、回りくどくてもまっすぐであっても、心からの言葉は、人に届きます。響きます。時に行動を起こさせます。
新和座が発した言葉があなたに届き、心が動いたならば、こんなに嬉しいことはありません。その際はどうぞお気持ちをお聞かせください。
皆さまの“心からのお言葉”こそが、我々を次のステージへと押し上げてくださる力となります。そして、この「届いた!」という快感にも似た感覚が、我々を表現の場へと駆り立てるのです。

一人でも多くの方々に“届く”舞台を創るため、表現を磨くため、座員一同挑戦する心を忘れずに精進して参りますので、今後とも劇団新和座をどうぞよろしくお願い申し上げます。

座長 いとうともえ